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大震災に思うこと

 

● 原 稔
(大阪市東住吉区)

 

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阪神・淡路大震災から早くも2年近くが経過しました。震度7の激震を記録したこの震災により6千人を超す人命が失われた事は周知の通りです。また、神戸市やその周辺都市では、大火災が発生したことや、ビル・家屋の倒壊で多数の怪我人が出たことも知られています。
ところで私は、地震から4か月後の5月15日に神戸を訪れ、兵庫県庁で芦尾長司副知事にお目に掛かり、託された義援金3億8千万円をお渡ししてお見舞いを申し上げたところ、副知事は「まさかこのような大震災が起こるとは」と声を詰まらせておられました。この日の神戸市内の繁華街は昔日の面影はなく、惨憺たる有様で目を覆うばかりでした。
また私は、震災後9か月経った10月12日に今回の大地震の震源地と言われている淡路島北淡町の野島断層を視察して参りました。早い話が、この断層を見るだけで今回の地震の大きさや自然の力の偉大さ、恐ろしさを身を持って感じました。広大な土地に大きな割れ目ができて、高低1m以上の段差が9kmも続いています。
私の住んでいる大阪市東住吉区には「家庭看護赤十字奉仕団」という団体があります。団員は90名で救急看護、在宅介助等に深い知識と高度な技術を身につけています。救援のための出動要請があり、昨年5月から10月までの半年間、会員が数名ずつ交替で被災地の 芦屋市へ出向き、ケア付仮設住宅でのボランティア活動を行いました。被災者の心のケア、健康や生活の相談から家事手伝いまで幅広く援助を行い、被災者の皆さんから大変喜ばれ、感謝されたそうですが、こういった団体が各地に組織され緊急時に備える必要を痛感致し ます。
今回の大震災を体験して、私の感じたことを列記致します。
1.日常生活の中でのコミュニケーションづくり、連帯感、相互扶助精神の大切なこと。これは淡路島北淡町で実証されました。住民の交流、町会組織の確立で人命救助、火災防止に大きな成果をあげたこと。
2.倒壊建物の下敷きになって死者や怪我人が続出したのは、救助の手遅れと応急手当ての体制ができていなかったのが原因です。今後の課題として検討すべき問題でしょう。
3.ボランティアに対する対応のまずさが目立ちました。緊急事態が発生した時はボランティアの力を借りることは極めて大切なことですが、今回はボランテアの受入れ、掌握と運用について全く体制がなく、ボランティア側の不満について反省と今後の対応策の検討が必要でしょう。
4.防災器材や救急物資の備蓄等が殆どなされておらず、初期救援活動に支障があったことは周知の通りです。この点の対策と今後の対応。
5.今回の震災で自治体の初動体制の不手際が指摘されましたが、こういった突発的大震災等には国の機関や職員も動員して救援に当たるべきと思います。この面の検討が大切であります。

 

 

 

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